新プラクティス『その場で議事録』

プロジェクトの開始当初は、お客さまと沢山の打合せを行う必要があります。最初のうちに認識を合わせて、目に見えないソフトウェアに対して、関係者全員で同じような輪郭を共有することは、プロジェクトの成否を左右する大事なことです。
そして、打合せをすると必ず必要になるのが『議事録』です。体制や契約方法によっては、必要ない場合もあるし、無くても認識があっていると言えるのならば、無い方が良いとは思いますが、お客さまは、ほとんどの場合、議事録を残して欲しいとおっしゃいます。そんな時に、打合せが終わった後に自社に戻って議事録を書いて、お客さまにメールで送って確認してもらって、相違点があったら送りなおしてもらって、それでまた直してからメールで送って再確認してもらって・・・ってやってると、時間と手間の無駄づくしです。こうして書いているだけで、イライラします。そんな時間があったら、コードの1行でも書いてる方がよっぽど生産的です。

後から言った言わないの話になるから残すんだ!って言ったって、自分らで残した議事録に振り回されて、しょうもない作業やコードが発生しちゃったら意味はありません。だから、議事録を残すくらいなら、その認識をお互い「忘れないうち」に、「動くものを作って」しまえば良い!とは思います。とはいえ、そんな風に少しずつ決めていければ良いけれど、お客さまの予算のとりかたも契約方法も、現状だとスパンが長いからそうはならない。だから、最初のうちは、ある程度は話だけで進めなければいけない部分もある。それ故に、記録を残すのだろうけど、今の形の議事録はどうも好きになれない。今までの経験から思い返しても、言った言わないでもめて、議事録を探ったなんてしたことないなぁ。結局、大事なのは、信頼関係なんです。そして信頼を得るためには実績を残すしかなくて、反復で見せていくしかない、と。余談ですね。

ともあれ、お客様に望まれた場合、議事録は残さなければいけません。問題は残し方です。その残し方に無駄があるので、そこを解消すべきでしょう。そこで、『その場で議事録』です。今や、みんなノートPCを持ち込んで打合せに出るので、ほとんどの議事録は、その瞬間に書くことができるはずです。その場で書いた議事録を、その打合せの時間範囲内で、お互いに確認し、合意してもらえば良いのです。もともと、議事録だって書いたものを送って合意を得ているので、それをその時間でやってしまっても問題は無いはずです。むしろ、ある程度時間が経過してから思い出して書いたり、思い出して確認したりする方が面倒でしょう。

『その場で議事録』で確認する議事録は、その打合せで話した結果なので、ホワイトボードの印刷というアナログな場合もあれば、テキストファイルでのメモ書きというデジタルな場合もある。それぞれを確認する必要はあるが、大事なのは「マスタ」という考えです。よく打ち合わせに資料を印刷して持ち込みますが、それぞれの参加者が、それぞれに思い思いに自分の印刷物に書き込んでしまうと、その内容は共有できなくなります。だから、統一した議事録が必要なんて話になるのでしょう。なので、打ち合わせ時には、議事録係を用意してその人間が、「マスタ」を編集する人として、そこで出た書き込み事項などは全て自分の手元の紙、ファイルに書き込みます。議事録係の持つ紙、ファイルが、「マスタ」になるわけです。

紙のようなアナログ媒体の確認方法は簡単です。マスタとなる印刷資料などに、議事録係がメモを書き込んで、その紙を全員で見ることで合意がとれます。ちなみに、ここでの文脈での打ち合わせとは、報告を目的とした会議ではなく、ヒアリングやブレーンストーミング的な打ち合わせを指しています。ですので、人数は多くて10人以下を想定しています。その人数なら全員で閲覧できる。

問題は、ファイルなどのデジタル媒体の場合です。よくある方法は、プロジェクタを使って映し出して、それで確認を取るという方法です。しかし、プロジェクタが無い場合や、ちょっと大層になってしまうのが困りものです。そこで、ノートPCは参加者の3分の1程度は持ち込んでいるという想定で、VNCを使う方法があります。議事録係のノートPCにだけ、VNCサーバをインストールしておいて、それ以外の参加者は、ネットワーク経由でブラウザからその議事録係のノートPCの中を覗けばOKです。VNCであれば、クライアントに何かインストールする必要も無いし、お客さまの会議室での打ち合わせなどで、ネットワークに繋げない場合も、そこでローカルに繋いで見ることができます。

こうすることで、議事録は従来の議事録の形式ではなく、そこでの共同成果物として扱うことができます。会議や打ち合わせって、割と非生産的な行為に思われがちですが、『その場で議事録』は会議を何らかの生産の現場にすることが出来るのです。ある意味、ペアプロならぬ、全員分析、全員設計といった趣です。ペアプロの常時レビューの考えと根底は同じだからです。ただし、このように進めるには、今度は、会議を今までよりもうまく進める必要があります。会議をうまく進める方法については、また別の機会に。

あとは、プラクティスにするなら英語名も考えないといけないですね。『ランデブー・ミーティング - rendezvous meeting』なんてどうだろう?英語的にちょっと意味不明かな。