技術を技術でしか語れない技術者

色々な技術者の方のプレゼンを聞いていると、少し残念なプレゼンが多い。特に若手にその傾向が多いのだけれど、技術の説明をする際に、技術的な言葉でしか説明ができていなかったりする。そのものの中身について説明したり、動く仕組みについては説明できるのだが、その技術がどういう位置づけであるとか、どういう場面で嬉しいのか、といったことは語れない場合が多い。(おそらく、若手にその傾向が多いのは、お客様と接する機会が少ないからだろう。自分の扱っているドメインとは別のドメインの人と接する機会が少ないと、うまく説明することができなくなるのかもしれない。)

勿論、話す相手が自分と同等程度の知識やバックグラウンドがあれば問題ない。しかし、それ以外の相手に説明する機会の方が多くあるし、そういった場面でこそ、うまく説明しなければ、せっかくの技術の良さを伝えられないことになる。(蛇足ですが、私が部下の資料をレビューする際には、「その技術を、社長に10分で説明できるか?」といったことを聞いたりします。それで本質を掴んでいるか、情報だけ持っているかの違いがわかります。本当に社長に説明できるチャンスをもらったとしてもそれくらいの時間でしょうしね。)

顧客には顧客のことばがあり、利用者のことばがあり、経営者のことばがある。技術者は、技術の説明をする際に、技術者のことばで語るのではなく、伝えたい相手の“ことば”を使いながら説明をしないと、その良さは伝わらない。相手のことばを使うためには、相手のことを知らないといけない。そのためには、多少の勉強も必要だし、興味のある範囲から少し広げる努力が必要になる。けっして専門家になる必要はないけれど。自分のことばを使うのではなくて、相手のことばを使うということ。たとえ技術者同士であっても、ことばで受け取る意味合いは必ずしも同じとは限らないことを忘れてはならない。

さて、確かに“ことば”は大事だけれども、それを振りかざせば良いというものではない。なによりも本当に大事なことは、相手の立場になって考えて話をするということ。つまり、それがマーケティングと言える。相手のことを考えるというのは、資料の準備の際は勿論のこと、話をしている最中も意識をする必要がある。今この瞬間に自分の考えはどこまで通じているのだろうか、この説明はちょっと難しかったか、といったことを考えながらプレゼンをするのである。このことは、本や記事を書いたりすることにも通じている。(ただブログは別だろうし、それこそが特性なのだと思う。これはまた別の考察で。)

そんな風にプレゼンができる技術者は、(多分)今はまだとても少ないけれど、経営者たちと対等に同じことばで話ができる技術者が増えると、日本のITの世界ももっと変わってくる・・・かもしれない。今、アジャイルでもDIでも何でも良いですが、新しい技術を現場に持ち込みたい時に、「上司の理解が得られないから・・・」「周囲を説得できないから・・・」といった理由で諦めていませんか。自分のことを理解してもらう前に、相手のことを理解する。人間同士の関係であれば、当たり前のことなんですけれど、ね。

(ちょっとまとまりきってないですが、ここまで。。。)